給食のおばちゃん
今週のお題「会いたい人」
僕には頭の片隅に鮮明に記憶に残っている人がいる。
それは小学校時代の給食のおばちゃん。
ヒサカさんだ。
15年以上も前の話。
ヒサカさんは当時30歳ぐらいだったと思う。
よく僕や友人が「ヒサカのおばちゃん」と呼ぶと「おばちゃんて言わないで!」というやり取りをしたものだ。
小学校のいつごろから、どういうきっかけでヒサカのおばちゃんと話すようになったのかは覚えていない。
でもヒサカのおばちゃんとは仲がよく、たくさん話をした記憶は確かにある。
僕と友人Aとヒサカのおばちゃん。
いつものトリオという感じだった。
僕の通っていた小学校の給食場には、当時、大きな受付のような窓口があった。そこでカウンターごしに食べ終わった食器を給食のおばちゃんたちに直接手渡しで返却するようなシステムだった。
食器を返すそのタイミングで、ヒサカのおばちゃんとはよく話をした。具体的にどんな話をしたのかはそこまで覚えていないが、昼休みが終わるギリギリまで話していた日もあった。
"教師と生徒"という関係とは違い、"クラスの友人"という関係ともまた違う、絶妙に心地のよい距離感のヒサカのおばちゃん。
僕はヒサカのおばちゃんと話す時間がとても好きだった。
とある日、僕はヒサカのおばちゃんから「私、もうすぐ辞めるんだ」という話を聞いた。
結婚して引っ越すからここは辞めないといけないという理由だった。
旦那さんになる人との共通の趣味であるサッカー。そのサッカーのスタジアムで結婚式を挙げるという話を聞いたのを鮮明に覚えている。
その話をしてから2~3ヶ月後だったと思う。
ヒサカのおばちゃんの最後の出勤日。
僕か友人Aが「授業が終わるまで待っていて」と言ったのか、ヒサカのおばちゃんが自分の判断で待っていてくれていたのかは覚えていないが、放課後にヒサカのおばちゃんと会うことができた。
すでに閉まっている給食場の横でヒサカのおばちゃんと話をした。僕も友人Aもヒサカのおばちゃんもホロリと涙をこぼしたのが今となってはいい思い出だ。
友人Aが気を効かせてインスタントカメラを持ってきていた。僕とヒサカのおばちゃんのツーショットが今も実家の引き出しに眠っている。はず。
最後の会話で「結婚して名字が○○になるからヒサカのおばちゃんじゃなくなっちゃうよ」という話も聞いたのだが、その名字は今となっては思い出せない。
顔は覚えているのだが、名前もその他の手がかりも何もない。15年振りに会ってみたいなぁヒサカのおばちゃん。
ちなみに探偵ナイトスクープにでも依頼すべき案件な気もしている。